コーティングしていないナイロンラインの吸水速度はどのくらい?細いラインは一瞬!?
ナイロンラインは吸水すると良く聞きますが、一体どのくらいの時間で吸水するのでしょうか?
昔村上晴彦さんがナイロンラインに水を吸わせて柔らかくしてから使うなんておっしゃっているのを映像で見た事がありましたが当時はそれを聞いても半信半疑でした。
最近ナイロンの吸水について調べていたところ計算式を見つけ、号数別にどのくらいの時間で吸水するのかを計算したところ興味深い結果になりましたのでご紹介します。
ナイロンと一口にいってもいろいろな種類がある
ナイロンの歴史は古く、1935年にアメリカのデュポン社がナイロン66を開発して以来様々な用途に利用されています。
ナイロンにはナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン11、ナイロン12などがあり、主に流通しているものはナイロン6、ナイロン66です。
ちなみに日本ではナイロン6を1941年に東洋レーヨン(現・東レ)が開発しています。
ナイロンの種類ごとに吸水率が異なる
”東レから引用”
ナイロンは種類によって特性が異なります。それは吸水率に関しても例外ではありません。
上に示したグラフは湿度毎の平衡吸水率を表しています。
平衡吸水率とはナイロンがある環境条件で吸水速度と乾燥速度が等しくなって見かけ上吸水が止まった状態になる吸水率の事を指します。
日本の平均湿度は約60%なので空気中でもナイロン6は約3.5%、ナイロン66は約2.5%の吸水率があります。
そして湿度100%ではナイロン6は約11%、ナイロン66は約8%の吸水率があるようです。
こうやってグラフで示されるとナイロンという素材がかなり水を吸収する素材であるということが良くわかります。
水中だけではなく大気中でも吸水する
”東レから引用”
上のグラフはナイロン66のペレット(成形前の粒状の塊で釣り糸もこのペレットを溶融させて製造しています)の大気中における吸水率の時間変化を表しています。
グラフ中の%RHというのは相対湿度を表しています。相対湿度とは私たちがよく言う「湿度」の事です。
このグラフからコーティングなどが施していないナイロンラインの場合は私たちの手元に届く頃にはある程度吸水していることが予想できます。
釣り糸の太さと同じナイロンの吸水時間をいざ計算
ナイロンがかなり吸水しやすいものであるということがなんとなく分かって頂けた所で実際にナイロンライン程度の太さだとどれくらいの時間で吸水してしまうのか計算してみましょう。
計算式は東レのホームページで紹介している計算式を使います。
t;経過時間[s],;時刻tにおける吸水率[%]
Cs;それぞれの環境条件における平衡吸水率[%]D;拡散定数
”東レから引用”
この式はC/Cs=0.8までは有効な式でして今回はナイロン6の場合吸水率約9%に達するまでの時間、ナイロン66ですと吸水率約6%に達するまでの時間を計算しました。
この計算では水中に沈めた糸の長さは50m、水温は20度、ラインのコーティングやナイロンの中への添加物は無しで射出成形の場合として計算しています。
安物のラインの場合はコーティングや添加物が入っていないでしょうから今回の計算と近い結果になると思われます。
1号までのナイロンの場合
グラフの横軸は糸の太さで単位は[号]を、縦軸は吸水に要した時間で単位は[時]です。
1号までのナイロンの場合は1時間以内です。あっという間という感覚ですね。
10号までのナイロンの場合
10号となると釣り人からすればかなり太い糸ですが数時間程度でかなり吸水してしまうことがわかります。
100号までのナイロンの場合
ここからは大物釣り用のラインの太さです。このくらいの太さですと吸水するのに1~2日位は掛かるようですね。
水温が高くなると吸水も早くなる
”東レから引用”
上の計算は水温20度の場合での計算でしたが、水温が高くなると更に吸水速度は上昇します。
夏場ですと水温は約30度まで上昇しますので上のグラフを参考にしますと20度の時の約2倍の吸水速度になることがわかります。
夏場のナイロンラインの取り扱いには十分気をつけるべきでしょう。
終わりに
ナイロンの吸水時間を計算してみましたがみなさまどのような感想を持たれましたでしょうか?
私としてはナイロンの吸水速度って1~2日位の時間が掛かるものだと思っていましたが、あっという間に吸水してしまうことがわかり驚きました。
これだけ速いとなるとコーティングだけしているラインの場合、ラインの切断面とどうしても近くなってしまう結束部分は早い段階で吸水してしまっている可能性もありますね。
こういった事を避けるために最近のラインにはシリコンなどの添加物が入っているのでしょうね。
ナイロンの吸水はラインをしなやかにするというメリットもありますが、ラインが太くなったり耐久性が低下するというデメリットもあります。
グラフを参考にどの程度までナイロンラインを使うかの目安にしていただければ良いと思います。
それでは。